緑蕪堂日記

現状を追認しない

代数的D加群と解析的D加群の違い

堀田、谷崎、竹内先生らによるD-Modules, Perverse Sheaves, and Representation Theoryという本があり、分野を超えてD加群を知ろうとする人が参照する筆頭格であるように思う。その著者のひとりである竹内先生による、この本の概説をする講演を見かけたので紹介したい。

Computational Approach to Mathematical Sciences, Video Archives

タイトルは『代数的D-加群が解析的D-加群よりいかに簡単かについて(拙著の紹介)』というもので、煽りっぽいがこの講義を聞けば納得が行くことかと思う。私の狭い理解の中で端的に言えば、代数的D加群は局所的にWeyl algebraに帰着できてしまうそうだが(本質的には有理型関数を係数に持つ線型微分方程式である)解析的D加群では当然そう簡単ではない。自分は微分方程式に興味があるので代数的D加群に多くのベージ数が割かれている意図を理解していなかったのだが、解析的D加群では示すのがとても大変な定理が代数的D加群であると(そこそこの代数幾何の知識があれば)簡単に示せるという筋で、"handy"なモデルケースとして知っておくべきものであると認識するようになった。

微分方程式(D加群)の特性多様体の包合性も、Sato-Kawai-Kashiwaraのmicrodifferential operatorを使った解析的な証明、Gabbarによる純代数的な証明(ここまでは谷崎先生の非可換環で言及され、後者は証明が付いている)の他にKashiwara-Schapiraにおいてmicro supportを使った幾何的な証明が存在することを初めて認知した。「代数解析は幾何」というのにも納得である。

度々、

「解析的な場合はどうか」

「柏原先生が全部やりました」

という旨のやり取りがあり、柏原先生の業績の鬼さ加減を垣間見、畏敬の念を覚える他無い次第である。