緑蕪堂日記

現状を追認しない

数学

超幾何微分方程式と局所大域原理

はじめに これは Math Advent Calendar 2017 - Adventar の17日の記事です。 前口上 微分方程式論には数論の研究者が数多くの貢献をしている。全ての数学がひとつであったGaussやRiemannの時代はさておき、モダンな所ではリーマン面上でのRiemann-Hilbert対…

Katzのrigidityはオイラー標数 そして幾何学的ラングランズ対応へ

自分の所属している研究室では「カッツ」と言うとまずKac-Moody代数のVictor Kacを思い浮かべる人しかいないのだが、数論で有名なNicolas Katzも微分方程式論に重大な進歩をもたらした。Katzのrigidityの理論は久々に数学をやっていて深い感銘を受けた理論な…

伝説の佐藤幹夫講義録が待望の公開(全米が泣いた)

去る7月13日にひっそりと数理解析レクチャー・ノートシリーズがKURENAIレポジトリにて公開されていた。 Kyoto University Research Information Repository: 数理解析レクチャー・ノート 3巻目がすでに京大の出版会から出ている広中先生の講義を森先生が記し…

代数的D加群と解析的D加群の違い

堀田、谷崎、竹内先生らによるD-Modules, Perverse Sheaves, and Representation Theoryという本があり、分野を超えてD加群を知ろうとする人が参照する筆頭格であるように思う。その著者のひとりである竹内先生による、この本の概説をする講演を見かけたので…

ワシの中山の補題は百八式まであるぞ

必要に駆られて代数幾何の人が息をするように使うという中山の補題を調べていたらこんなページに出くわした。 Stacks Project — Tag 07RC 中山の補題の補題の12個のヴァリエーションを纏めて書いてある。凄まじい。代数(幾何)プロパーの人はこれ+αぐらいの主…

層のCokernelが層にならない例(一発ネタ)

複素関数論を学んでいれば学部の2年生でも作れそうな例なのであるが自分はSchapiraのLecture notesで見るまで気付かなかったし、世間でも余り見かけないので紹介しておく。 を上の正則関数のなすベクトル空間の層だと思い、その間の準同型として正則微分を取…

(線形)微分方程式論のためのSheaf Theory

無論ここで層の定義や性質を述べるようなことはできないのだが、線形の微分方程式論をやる上で微分方程式をベクトル束上の接続として捉え直すと幾何学的なバックボーンが得られる。 そうした時に層として考えた方がkernel(これは解空間にあたる)を取るなど…